春から大学生になってみる

先日誕生日を迎え、52歳になりました。

鏡やガラス窓に映る僕は、誰がどう見ても、そして僕自身が見ても、まごうことなきオッサン。「年齢が表(顔)に如実に出はじめたなぁ」と日々感じております。




さて、そんな私awは52歳にして、この春から大学に通うことにしました。学校は昨年開校したばかりのオンライン大学、「ZEN大学」です。

ZEN大学がどんな学校かはあとで説明するとして、なぜ僕のようなオッサンが大学に通うことにしたのか、自分でもちょっと分かっていないところがあるので、まずはこの点について整理しながら書いてみたいと思います。

財産が底を突いた

僕は高校卒業後に地元の消防士になり、3年後に退職して上京。2年間美術学校に通ったあとレコード会社に入ってデザインを学び、その後は黎明期だったネット通販の業界に飛び込んで、文字どおり遮二無二(しゃにむに)仕事をしてきました。

20代から30代にかけて、個性豊かで異様とも言える才能の塊たちがひしめく現場で、必死に食らいつきながら得た経験と知識は、僕の財産となりました。しかし、ふと気づくとその財産が目減りしている。学びやインプットが消費に追いつかず、ここ10年くらいは蓄えを切り崩してその日暮らしをしているような感覚でした。あるいは、僕の持っている武器が、時代の流れとともにすでに武器ではなくなっているのかも知れません。

僕の働くべき時間があとわずかであれば、残ったものを掻き集めて、ごまかしごまかし何とかなるのかも知れません。しかし、実際にはまだまだ長い時間が残されています。

昨年、2025年に団塊の世代が後期高齢者になりました。僕たち団塊ジュニアが高齢者の仲間入りをする2040年は、日本人の3人に1人が高齢者(65歳以上)になると見込まれています※1

その頃、生きていくためのお金を年金のみに頼ることは間違いなく不可能になっているだろうし、社会への労働力供給はもちろん、生きがいといった観点からも、僕たちの世代は70歳、80歳まで働くことが当たり前になっていると予想します※2。つまりあと20〜30年は働くことになりそうなのです。

とはいえ、若い頃のように気力と体力にものをいわせ、当たって砕けろのスタンスで猛烈に仕事をしていくことで学ぶのは、諸般の事情(体力と気力の低下)により少々難しくなってきました。

現在の生活や仕事をできるだけ崩さず継続しながら学び直しができればと、数年前から調べていたのですが、環境や条件に合う選択肢が見つからず、また後述しますが自分が今何を学ぶべきかを明確にすることにも難しさを感じ、身動きがとれなくなっていました。

そこにZEN大学という選択肢が出現し「これだ!」となったわけです。

学びたいという気持ちが強くなった

もう一つの理由は、漠然としてはいるものの、無性に学びたいという欲求を感じたからです。

僕は若い頃、本当に勉強をしてきませんでした。勉強できる時間、機会を本当に疎かにしてきました。

早生まれの影響もあってか、小学校4年生の頃までは勉強も運動も全くダメだった僕ですが、5年生になると急に両方できるようになり、勉強が楽しくなります。中学生まではその楽しさ、熱意が続いていたのですが、ある理由から勉強や進学に対して無気力になってしまいました。いちおう高校には進学したのですが、もともと考えていた学校とは別で、進学後はほとんど勉強しませんでした(授業には出ていましたが、別のことをやっていました)。

しかし、いざ仕事をはじめると — どんな仕事でもそうですが — 勉強、勉強の毎日です。学ぶ必要のない仕事なんてありません。

特に在京時に勤めた最後の会社では、学びの重要さを痛感する日々でした。

同僚たちは若い頃から勉強を積み重ねてきており、しっかりとした基礎、土台があります。しかし僕にはそれがありません。その時その場で場当たり的に勉強するものの、周辺知識がないので応用が効きません。同僚たちが学ぶことで積み重ねてきた、そして新たに獲得した知を使って縦横無尽に仕事をしている様子を見て、心底羨ましく思いました。仕事の現場で彼らは僕よりも圧倒的に自由だったんです。

こうした経緯から、僕の中に学びたいという思いが澱のように積み重なってきていたのだと思います。

なぜZEN大学なのか

ZEN大学は、日本最大の通信制高校であるN高等学校などを運営する角川ドワンゴ学園が2025年に開校したオンライン大学です。

通信制の学校といえば、僕が高校生だった35年前は、どちらかと言えば消極的な選択肢でした。ネットの書き込みを見ると、N高が開校した2016年頃の評価でさえ、「やめとけ」※3。しかし2026年現在のN高在校生は3万人超。東大や慶應といった難関校へも多数の合格者を輩出するなど、かつての通信制へのネガティブなイメージはもはや過去のものとなりました※4。N高がこの10年で証明したのは、ネットだからこそ自分らしく、かつ高いレベルで学べるという新しい学びのスタンダードでした。

これらの成功体験とノウハウをベースとして生まれたのが、ZEN大学です。

オンライン+オンデマンドである

僕がZEN大学を選んだ理由は、主に次の2つです。

1つは、授業がオンライン+オンデマンドであることです。

通学を要する学校の場合、そのための時間がかかります。授業も時間が決まっていて時間に縛られるため、学校を中心としたスケジュールに変える必要があります。しかしオンライン+オンデマンドであれば、今の生活を大きく変える必要がありません。

リビングでノートパソコンに向かう僕と、隣で宿題をする娘。教える・教えられるという関係ではなく、共に学ぶ者として空間を共有することは僕の小さな夢でもありました。父親が勉強してる姿を見て娘も何かしら感じるものがあるのではないかと、漠とした期待も抱いたりしています。

何を学ぶべきか、決めなくていい

学びたいという気持ちはあっても、ぶっちゃけ「これを追求したい」という分野がない。これもなかなか学びをスタートできなかった理由でした。

より正確に言うと「何を学べば将来役に立つか分からない」ということなのですが、これは誰にも分からないというか、多くの人にとっても正解はないと思うんです。弁護士になりたい、医師になりたいといった明確な目標があれば別ですが、10年後の僕がどんな環境でどんな仕事をしているか、正直分かりません。だから今、何を学ぶべきかも分からない。

だから、自分の興味関心に素直に従って何を学んでいい。しかし簡単に投げ出せない、逃げ出せない。そんな環境に身を置く必要があると考えました。

ZEN大学は「知能情報社会学部」の1学部のみですが、6つの分野に多くの科目が設けられており、これらを横断的に、好きなだけ学ぶことができます。

例えば、数理の分野には『宇宙際タイヒミューラー理論』のような専門的なものから、デジタル産業の『マンガ産業史』まで、何かしら好奇心をくすぐる科目が並んでいます。

ZEN大学のHPから全科目を転載してみました(2026年1月現在)。

  1. 数理
    現代社会と数学、現代社会とサイエンス、数学的思考とは何か、数学の方法、数学史、逆さ科学史、初等代数概論、日常に現れる物理学、線形代数1、線形代数2、解析学1、解析学2、解析学3、グラフ理論、数理構造の発見と活用、集合と論理、記号論理、距離空間、複素解析、群論、位相空間、多様体、圏論、数理統計、力学、電磁気学、量子力学、熱統計力学、数理科学発展演習Ⅰ、数理科学発展演習Ⅱ、環論、組合せ論、トポロジー、積分と測度、ガロア理論、数理論理学、量子からはじまる確率論、量子コンピュータ演習、Wolfram 言語で学ぶ科学計算、宇宙際タイヒミューラー理論1、宇宙際タイヒミューラー理論2、宇宙際タイヒミューラー理論3、宇宙際タイヒミューラー理論4、ゼミ(数理科学特論ゼミⅠ)、ゼミ(数理科学特論ゼミⅡ)、ゼミ(数理科学特論ゼミⅢ)、ゼミ(数理科学特論ゼミⅣ)、ゼミ(量子科学技術)
  2. 情報
    ITリテラシー、デジタルツールの使い方、人工知能活用実践、情報セキュリティ概論、情報倫理と法、データサイエンス概論、ビジュアルプログラミング、Webアプリケーション開発1~4、Pythonプログラミング、Webユーザーエクスペリエンス、メディアアート史、統計学入門、ディープラーニング1~3、インターネット概論、プロジェクトマネジメント概論、Linux 概論、オブジェクト指向プログラミング、コンピューターサイエンス概論、JavaScriptによる自動化、効率化、情報処理概論、コンピュータ概論、機械学習概論、計算機実験で学ぶ確率とモンテカルロ法、ビッグデータ分析概論、R言語プログラミング、クラウドコンピューティング技術、関数型プログラミング、オートマトンと形式言語理論、暗号技術とその応用、データベース運用実践、並行処理プログラミング、画像処理論、論理回路概論、データサイエンス実践Ⅰ~Ⅲ、ビッグデータ分析実践、情報収集と伝達技術、3Dモデリング技術演習、ジェネラティブアート演習、インターネットのしくみ、Javaプログラミング演習、Webセキュリティ演習、デジタルイラスト演習基礎、AIアルゴリズム実践、統計学展望、マーケティング×データサイエンス、ゲームプログラミング演習、チームプログラミング演習、プロジェクトマネジメント応用、Webアプリケーション開発演習、動画クリエイター技術演習、Webデザイン演習、デジタルイラスト演習発展、共創場デザイン演習、統計数理の方法、自然言語処理の方法
  3. 文化・思想
    日本文学Ⅰ、文化人類学Ⅰ、心理学、世界が変わる編集力、リテラシーと応用のための物語理論、哲学概論、公共哲学、マンガ絵コンテから学ぶ視覚表現、近・現代アート概論、認知神経科学、科学哲学、人新世の人類学、日本文学Ⅱ、文化人類学Ⅱ、民俗学、日本科学史、芸術と文化資本Ⅰ、統計学を哲学する、日本大衆文化史、生きてゆくための禅、政治を超える哲学Ⅰ、政治を超える哲学Ⅱ、社会で活きる囲碁論、心理学実験・調査演習、WEBコミック演習、こころの成り立ちとメンタルヘルス、ウェルビーイングをデザインする、芸術と文化資本Ⅱ、日本文学Ⅲ、文化人類学Ⅲ、AI 時代の科学と哲学、フィールドワークで学ぶ宗教思想史、ゼミ(心の科学)、ゼミ(物語創作と物語の構造分析)、ゼミ(トークイベントをつくる)、ゼミ(展覧会のつくりかた)、ゼミ(文芸批評論)、ゼミ(ファン文化論を捉えなおすための参加型文化論)、ゼミ(数理哲学)
  4. 社会・ネットワーク
    社会学Ⅰ、法学Ⅰ、伝わる論理とコミュニケーション、AI社会の歩き方、地域研究、意思決定の能力開発、共創地球論、情報社会の総合安全保障、ネット時代の著作権、ジェンダー論、メディア論、科学技術と社会、情報社会論、戦後日本史1、異文化理解、大学とメディアの人類史、社会学Ⅱ、法学Ⅱ、戦後日本史2、社会学Ⅲ、現代スポーツ構造分析、SFから考える未来ビジョン、現代社会理論、未来社会デザイン論、音楽と社会、子どもと地域づくり、コラボレーション・クリエイティブ、スマート田舎のススメ、課題解決と改革のリーダーシップ、民主主義論、国際関係論、ゼミ(情報社会の政治学)、ゼミ(社会学)、ゼミ(意思決定研究と実践)、ゼミ(異文化理解)
  5. 経済・マーケット
    企業経営、地域アントレプレナーシップ、地域課題の解決とイノベーション、経済言説史、マルクス経済学、企業経営と会計、マクロ経済学、ミクロ経済学、企業経営とファイナンス、デジタル・マーケティング、スタートアップ、農業とデジタルテクノロジー、交渉・合意形成概論、現代資本主義論、マクロ経済分析演習、課題解決のための計量経済分析、事例から学ぶ統計学、財務分析演習、企業価値創造とM&A、交渉・合意形成演習、スタートアップ実践、ゼミ(地域づくり新事業ワークショップ)、ゼミ(ビジネスモデル分析)、ゼミ(経済発展を考える)、ゼミ(計量経済)、ゼミ(幸福曲線)
  6. デジタル産業
    IT産業史、マンガ産業史、アニメ産業史、日本のゲーム産業史、二次創作の歴史から見るネット文化、コンテンツ産業論、ゲーム制作論基礎、ゲーム制作論応用、メディアで検証する未来の作り方、アニメのクオリティー管理と商品性、マンガの企画立案とプロデュース論、文化資源とメタバース、文化資源のデジタルアーカイブ、ゼミ(文化資源アーカイブとメタバース)、ゼミ(アニメ作品の分析メソッド)

すごい数です。

とりあえず、気になった科目を片っ端から受講してみようと思っています。そこから、より深掘りしたい分野が見つかれば掘っていけばいいし、もし在学中にそれが見つからなかったとしても、その後の数十年の人生の中で何かしら結びついてくるものがあるかも知れない、そんな楽天的な態度で、とにかく学ぶことを楽しんでみたいと思っております。

52歳の大学生。卒業する頃、56歳になっています。よりオッサンになっているでしょう。しかし、何もしなくても56歳になるわけですから、今の自分が想像もつかないような56歳のオッサンになっていたいですね。

  1. 厚生労働省「我が国の人口について
  2. AIの進展によって社会が劇的に変化し、全く違う未来が到来する可能性もゼロではありませんが
  3. Yahoo!知恵袋
  4. 全日制・定時制の生徒数が少子化で激減する一方、通信制高校の生徒数は2024年度には約29万人に達し、10年前の約1.7倍、つまり高校生の14人に1人が通信制(文部科学省「学校基本調査」)を選択しています。選択理由は「プログラミングを学びたい」「芸能・スポーツに集中したい」「難関大受験のために自分のペースで自習したい」といったものが多いようです。2023年度の通信制高校からの大学進学率は約27%。専門学校等を含めた進学率は50%を超え、過去最高を更新。N高グループ(N高・S高・R高)は、東京大学、京都大学、早稲田・慶應などの難関校に毎年多数の合格者を輩出しています。

aw

Live in Tottori-Pref, JPN. Love Camp, Sandwich, Coffee, Beer and Scotch on the rock. Pursuing Self-Sufficiency Life.

おすすめ

ご意見・ご感想をお聞かせください

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください