耐震補強について考えてみた

以前、建築家にダメ出しを食らってしまったT町にある祖父の土地。その後、庭でBBQしたり、子どもをプールで遊ばせたりしていて、やっぱりここを使わないのは勿体無いなーという思いが強まってきました。

ただ、以前の記事にも書いたように、両隣に築年数50年前後のビルが建っていて有事の際に倒壊する危険はあるが、実際問題、改善のため強く働きかけられないなど、状況が良いとは言えません。そしてこれがいつになれば改善されるのか、というのも分からない。そんな土地に、数千万円という大金をかけて住居を新築するというのは、やはり、客観的に考えて良いアイディアとは思えません。

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そこで、少し考え方を変え、あまりお金をかけず今ある家屋を活用して住んでみるのはどうか? と。

家賃の感覚で修繕し、住んでみる

今僕たちが暮らしているアパート、毎月かかっているコストは家賃や駐車場代を含めて月々8万円、年間96万円。ほぼ100万円です。

T町の家はさすがに古いので暮らすために少し手直しして、仮に、500万円かかったとします。今のアパート代に置き換えると、5年分の家賃と同じです。

つまり、5年間、賃貸物件に暮らすコストでT町に実際に暮らしてみるわけです。何事もなく5年間暮らせられたら初期費用は償却したと考えられるし、もしその前に何かあったらまあ仕方ないかなと(と思える額を、初期費用の予算とします)。その間に、実際にT町に暮らすことで自分たちの考え方、特に土地に対する考え方や状況、もしかすると周囲の状況が変わっていくかも知れませんし。

要するに、住みながら様子を見る、という感じでしょうか。

耐震補強工事が必要

これを実際に行動に移すには、T町の古い家屋をおしゃれにリフォームするとかそういう話の前に、耐震補強工事をする必要があります。なんせ半世紀以上前に建てられた木造住宅ですから。

それに、両隣のビルにそれを(心の中で)要求するなら、まずは自分がやらないとですよね。

ただ、現在のT町の家の所有者は祖父ですし、その家ではない別の場所ではあるものの彼は元気に暮しているので、「さあ、善は急げだ!」とはいきません。が、いつかその時が来た時のためにも情報収集をしておきたい。

NHKの番組で特集していた

そんなことを考えはじめて迎えた最初の週末、土曜日の朝にいつも見ている「週刊ニュース深読み」というNHKの番組で、耐震補強工事に関する特集をやっていたのです。なんとタイムリーな!

この番組で、一番衝撃を受けた情報がこちらです。

耐震補強は、地震から住宅を守るためのものではなく、中にいる人の命を守るためのもの

こう書くと当たり前のようですが、実は僕、耐震補強に対して「大きな地震があっても建て直しが必要なほどの被害が出ない、あわよくば全然被害が出ないほど、家が頑丈になる」という理解を持っていました。僕の理解は、主語も目的も異なっていたわけです。

僕にとっては目から鱗でした。

T町の家屋における耐震補強の方向性

耐震診断の結果や、工事の見積もりなどを見ないと何とも言えないところはあるものの、僕が考えるT町の家屋に対する耐震補強の方向性は、以下の2点に集約されます。

1.完全な倒壊は防ぎたいが、ある程度壊れてもいい

2階から1階までペッチャンコになるような、完全な倒壊は防ぎたいですが、「ああ、これは建て替えしたほうがいいかな」という程度には壊れてもOK。

つまり、地震の揺れが収まったあと、そこから逃げ出す空間を保持してくれれば良しとします。

2.寝室を特別に強化

人間、寝ている時が一番無防備です。揺れた!となってから動き出すまでに、起きている時よりも確実に時間がかかります。

そこで、寝室だけは特に頑丈に耐震補強します。他の部屋にいても、地震が起きたら寝室に逃げ込みます。両隣りにあるビルが万が一(よりも確率高いと思われますが)倒壊し、しかもウチの側に倒れてきた場合でも、ここに入れば命を守れるようにしなくてはいけません。

いわば、耐震シェルターですね。

実際に、耐震シェルターを商品として提案しているハウスメーカーも多数あり(*)、助成する自治体もあるようです(鳥取市には無し)。

CAMP HOUSE/一条工務店の耐震シェルター
出典:一条工務店

しかし、寝室を強靭に作っても、そこから速やかに脱出することができなければいけませんので、居室のレイアウトや避難路の設定と補強なども併せて考える必要がありそうです。

耐震補強工事の内容

さて、NHKの番組で紹介していた、一般的な耐震補強工事の内容です。だいたい、以下の5つになるようです。

  1. 筋交い
  2. 耐震壁
  3. 柱の接合部を金具で固定
  4. 屋根を軽くする
  5. 基礎を補強

もちろん、全てを適切に実施することで耐震強度は高まるはずですが、NHKのテレビ番組に出ていた専門家曰く、「予算や目的にあったかたちでやるのが良い」とのこと。僕の上記2点についても、それを踏まえてのものです。

番組視聴後に、番組ホームページに寄せられた視聴者の意見を読んでみました。先日大地震のあった熊本からの意見が多く、当事者の方からの貴重な意見を読むことができたのですが、その中に次のようなものがありました。

熊本地震に遭いました。我が家は古い住宅ですが、被害は小さかったです。耐震化はしていません。一番は、地盤です。熊本地震では造成地、盛り土、液状化で新耐震基準の家でも住めなくなった家が多数です。耐震化は大事ですが、地盤調査が一番だいじです。
引用:NHK

「地盤(調査)が一番だいじ」というのは、本当にその通りだと思います。上だけいくら頑丈にしても、豆腐のようにやわな地盤だったら意味がないですもんね。

ちなみに、T町は地盤が強くないので新築するならしっかりとした基礎が必要だという話を、以前T町の土地を建築家に見てもらった際に聞いています。となると、T町の家屋には5番目の「基礎の補強」工事は必須そうです。

耐震診断

どんな内容の耐震補強工事を実施するにせよ、T町の家屋がどんな状態なのか、どの程度の耐震補強工事が必要なのかを調べるために、耐震診断を受ける必要があります。

鳥取市では、年度ごとに上限戸数が決まっていますが、無料で耐震診断を受けられるようです。

さて、この耐震診断ですが、最近建てたばかりの家なら受ける必要はないのでしょうか?

実は、木造の戸建て住宅は「4号特例(建築基準法第6条第1項第4号)」と言って、確認申請の際に構造計算の審査の簡略(省略)が認められています。つまり、耐震基準に適合しているかどうかの確認はとられていない、ということです。

予算的に厳しいケースが多い一般住宅では、限られた予算が、家の間取りや機能など、嗜好や日常的な暮らしやすさ、外観的なことに割かれるのは当然です。「見た目を犠牲にしていいから、耐震強度をしっかり高めてくれ!」という施主は、あまり多くはないでしょう。

それがそのまま耐震基準不適合を意味することはないと思いますが、実際、熊本地震でも、2000年基準と言われる最新の耐震基準を満たしていると思われる住宅のうち、2.3%が倒壊しています。その理由が、先述の地盤の弱さなのか、住宅そのものの強度不足なのかは分かりませんが、新しいから安全だと言い切れない場合もある、と言えそうです。

ちなみに、耐震診断は「自分の家は大丈夫だった」と安心するために受ける人が多いそうです。健康的な人は毎年受けるのに、タバコも吸うし、大酒飲みだし、脂っこい食べ物が好きで、運動は大嫌い、みたいな人が定期的に健康診断を受けないのと同じで、「この家は耐震診断、受けてほしいなあ」という家からは申し込みはかなり少ないそうです。

確率論的地震動予測地図

最後に、僕の暮らす鳥取市で、今後どれくらい地震の起きる可能性があるのかを見てみたいと思います。

先日、政府の地震調査研究推進本部が、主要活断層で地震が起きる確率を表す「長期評価」について、これまでのパーセント表示を止め、S、A、Z、Xの4ランクに分ける方針をまとめていましたが(どれが高確率がイマイチ分かりづらい印象ですが)、こちらのマップはそれ以前のものです。

まずは全国版。

CAMP HOUSE/確率論的地震動予測地図
出典:地震ハザードステーション震度別の詳細情報はこちら)

次に、鳥取県がよく見えるように切り取ったもの。

CAMP HOUSE/確率論的地震動予測地図

これをみると、鳥取県全体は0.1〜3%の薄いオレンジ色で塗られていますが、よく見ると、僕の暮らしている鳥取市街地(画像内矢印)はそれよりも一段階濃いオレンジ色で塗られています。最大でも6%(500年に一度程度発生する)という確率です。

この確率を高いと見るか低いと見るか、人によって分かれそうですが(だから、4ランクに分ける形式に変更になるんですが)、熊本地震は地震発生確率は7.6%、布田川断層帯では最大で0.9%とされていて、それほど高いリスクはない、むしろ安全と認識されていたそうです。

つまり、言えることはただ一つで、0%じゃないということなんですよね。いつか必ず起きると。それがいつなのか分からない。だから、備えなくてはいけません。

診断本を買って、まずはできる勉強から進めてみることにします。

記事を書くにあたり、以下のホームページや資料を参考にしました。
政府 地震調査研究推進本部
・日経アーキテクチュア「被災者を苦しめる4号特例
木造住宅耐震補強工法の紹介
木造住宅の耐震改修の費用(PDF)

aw

Live in Tottori-Pref, JPN. Love Camp, Sandwich, Coffee, Beer and Scotch on the rock. Pursuing Self-Sufficiency Life.

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2件のフィードバック

  1. スイスイ より:

    耐震補強は 揺れの力に逆らい耐える必要があり
    バランスをふまえた全体的な補強が必要で高額
    でも、結局は補強しきれない弱い部分に力がかかり そこから壊れます。
    費用対効果で考えるなら
    屋根を軽くし 制振ダンパーなどで 揺れを軽減させながら 寝室や居間のみ内部から鉄骨などで構造補強するのが良いかなと思います。
    隣が倒れてくるのは論外ですけどね 笑

    • aw より:

      スイスイさん、コメントありがとうございます 🙂

      アドバイスをありがとうございます。屋根は以前の住人である祖父が存命の時に、瓦葺きだったものをトタンに変えているので「屋根の軽量化」はいちおう終わっているみたいです。が、他は全然できていません(涙)。
      滞在時間の長い居室の構造補強、したいですが、隣接する建物の倒壊の可能性あり……悩みどころです。命に関わることなので、悩んでいる場合ではなとも思うのですが。

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