子どもに本を好きになってもらうには
本を読むこと、好きになることは、多くのメリットこそあれデメリットは見当たりません。
集中力や想像力、語彙力などがつくということから、子どもに本を好きになってほしい、たくさんの本を読んでほしいと考える親は多いと思います。僕たちもそうです。
我が家の娘も5歳になり、少しずつですが自分で本を読むようになってきました。彼女なりに読書を楽しんでいるようです。
そこで我が家でも、そのまま本好きになってもらえるように調べたり生活環境を工夫したりしています。今日はそのあたりについて話できればなと。
僕たちが、子どもに本を好きになってもらうために大切だと思っているのは、
- 本へのアクセシビリティ
- 楽しい本との出会い
- 本を読む時間的余裕がある
- 親も本を楽しんでいる
の4つです。
1. 本へのアクセシビリティ
いきなり難しそうな英単語で恐縮ですが、アクセシビリティ(Accesibility)はウェブ業界では一般的に使われる言葉です。
ウェブの場合だとJIS規格など細かな取り決めがあったりしますが、この記事で考えるアクセシビリティはそれとは別で、利用のしやすさ、それが近くにあり、手を伸ばせばいつでも触れられる、そんなイメージです。
これを「子どもと本」に応用すると、次のような環境をつくることがアクセシビリティを高めることになるのではないでしょうか。
- いつでも本が目に入る日常空間
自宅の食堂や居間など多くの時間を過ごす空間のみならず、玄関や廊下、寝室などさまざまな場所に本があり、読みたい時にすぐに手に取ることができ、本が常にそばにある。 - 多量の本へのアクセスが容易
書店や図書館などに行きたいと思ったらいつでも行ける。好きな本が買える、借りられる。 - 関心への入り口を閉めない
子どもが読みたいと思った本へのアクセスを遮断しない。
一つひとつ、考えていきます。
a.いつでも本が目に入る日常空間
勉強部屋や書斎など決まったところだけに本があるんではなく、家のいたるところに大小さまざまな書棚があるイメージです。
スマホが目の前に置いてある場合と隣の部屋に置いてある場合、どちらが利用頻度が高まるかは言わずもがなですが、本も同じだと思います。
必要ないかもですが2つほど例を示しますと、1つ目は「耳をすませば」の主人公、月島雫の自宅の居間。
©ジブリ
雫は、日中は図書館通い、夜もお菓子をポリポリしながら読書、しまいには自分で小説を書きはじめるほどの本の虫。
これは図書館で司書として働く雫の父、靖也の影響も大きいと思いますが、月島家の決して広くない団地の住まいのいたるところに本が置いてあるという環境も少なからず影響してると思うんですよね。
先の画像(ジブリが公式に提供している静止画)ではわかりづらいのですが、左端に崩れないように束ねてある本がおそらく100冊以上は積み重ねてあります。読みかけの新聞が食卓の上に無造作に置かれているのもいいですね(笑)。
続いては、海外ドラマ「グッド・ワイフ」の主人公、アリシアが自宅兼事務所にしている部屋。
壁自体が書棚になっています。奥の部屋の壁も棚になっていて、本が置かれているのが見えますね。
壁一面の書棚を埋めるためにはかなりの蔵書が必要ですが、逆にここを本で埋めようという動機付けが生まれていいかも知れません(笑)。
さて、我が家に話を移しますが、今から2年前、当時僕たちの暮らしの中心となっていた和室に書棚をつくったことがあります。
制作した2019年当時。今はいっぱいになってしまい、増設が必要です
ここに書棚をつくった理由は先に述べたようなものなのですが、残念なことに台所・食堂をリフォームしたことで暮らしの中心部がそちらに変わってしまい、和室の書棚が日常的に目に入らなくなってしまったんです。
そこで、ふだん過ごす台所や食堂に小さな書棚をつくったんですね。
食堂を本がある空間にするという意味合いも大きいですが、もう一つ大きな理由があります。それは後述。
今回つくった書棚は、場所が天井付近と明らかに子どもが使えるものではないので、低い位置にも書棚をつくる予定です。食堂以外にもできる限り、不自然にならない程度に書棚を加えていこうかなと。
ただ、子どもが使える高さに設置すると、狭い我が家では日常動線を遮ることになるので場所の選定が難しい。
家を建てる時、リフォームする時など、設計段階からこうしたアイディアを取り入れることができるといいですよね。僕も今住んでいる家にいろいろと手を入れてきましたが、今考えると場当たり的な内容が多く(目に見えている問題を解決するための作業)、もっと子どもの成長などについても検討に含めることができたらなと思いましたね。
b.多量の本へのアクセスが容易
書店や図書館は、本というメディアが、しかもいろんなジャンルのものがめちゃくちゃたくさんあることを肌で知ることができますよね。一冊ずつ読まなくとも、たくさん並んでいる本を見るだけで子どもの世界が広がる、そんな場所だとも思います。
自宅にある本だけでなく、子どもがもっと多くの本に簡単にアクセスできるように、書店や図書館などに定期的に行くこと。
そしてもし子どもがそれを要求したら「え〜、今日は時間ないからまた今度」とは言わずフットワーク軽く応じるなど、子どもが本に、しかも大量の本に触れやすい環境をできる限り提供したいですね。
ちなみに、「多量の本へのアクセス」という観点では、電子書籍はたくさんの本を一つの電子書籍リーダーなどのデバイスに入れておくことができますし、入りきらない場合はクラウドに置いておいて必要な時に取り出せばOK。なにより読みたいと思ったら書店に行かなくても配達を待たなくても、1分後には読みはじめることができるなど、めちゃくちゃ便利ですよね。
ただし電子書籍は、メディアの中に隠れているので「あの本を読もう」といった具体的な目的を必要とするメディア。
目に偶然映った本が楽しそうだから読んでみたいとか、何気なく手にした本が面白かったといった出会いを期待するのは少々難しいメディアだと感じます。特に幼い子どもにとっては。
c.子どもの関心を否定しない
前述の「多量の本にアクセス」したあとの注意点がこちら。
子どもが書店や図書館で、大人である親にしてみれば「え〜、こんなん買うの/借りるの?」と思った本を手にしても、笑顔で応じる……本の世界への関心を大人が否定しないこと。これが重要なようです。
書店で「読みたい本を1冊選んでいいよ」と当時4歳の娘に伝えたら、1歳児くらいに向けて書かれた本を選んだことがあり、「別の本の方がいいんじゃない?」という言葉を飲み込むのに苦労した経験があります(笑)。
子どもが「コレ、なんだろう?」と思って開こうとしている窓、扉を「これは見ちゃダメ」と大人が閉めていたら、そりゃあ「じゃあ、いいよ」となっちゃいますよね。
言うなれば、個々の本へのアクセシビリティを認めてあげる、ということでしょうか。
そしてこの「とにかく何でも試してもいいよ」という親の姿勢が、次の需要ポイントに繋がることになります。
2. 楽しい本との出会い
これ好きだな、面白いなと素直に思える作品と出会うことは、素晴らしい読書体験を持つことを意味します。
僕の母曰く、僕は小さい頃から本をよく読んでいたそうですが、幼い頃の自分の記憶では、その母の影響で「赤毛のアン」をよく読んでいました。
映画とは違って、いつどのように赤毛のアンという作品に触れたのか覚えてませんが、おそらくいつも目にしていて知らないうちに手にとっていたんでしょう。
我が家には3冊の「赤毛のアン」があります
赤毛のアンを通じて本の楽しさを知り、そこから書店に行って自分で本を選んだり、長時間立ち読みしたり(お金がなかったので書店で読破するのが当時の僕にとっての普通の読書でした。幸運なことに自宅から徒歩数分の場所に大きめの書店がありました)、なけなしのお金で買った本をひたすら何度も読み込む、といった僕の読書体験がはじまりました。
楽しい体験を与えてくれる本との出会いは偶然に訪れるし、成長度合いや関心時によって気に入る本も変わってくると思いますが、いずれにしても数を撃つ必要があると思っています。
家のいたるところに本がある、それもいろんなジャンルの本がある。いつでも書店や図書館に行けて、「これ読みたい」と思った時に否定されない……そうしたアクセシビリティの高い環境が、様々な本を手にとって読むことにつながりお気に入りの本と出会う機会を提供するのではないか。そんなふうに考えています。
3. 本を読む時間的余裕がある
学校や塾、習い事など、現代の子どもたちは多忙ですよね。
自由に使える時間が少ない状態では、ふだんの生活の中でさえ様々な娯楽が多く存在する中であえて「本でも読むか」とはなりづらいですし、仮に読みたい本があってもそれを開く時間が確保できなければ読むことができません。
幼い子どもにとって本を読むことはあくまで楽しいことであるべきで、日々の生活の中でこなしていくタスクになってはいけないと思っています。
のんびりとした時間の中で好きな本を開いてゆっくりと楽しむ。
子どもがそんな時間を持てるように大人が工夫する必要があると感じます。
4. 親も本を楽しんでいる
「本って面白いよ」、「本って自分のタメになるよ」などといった言葉を並べてみても、その言葉を発する当の本人が本をたいして読まず、スマホばかり眺めていたらどうでしょう。
信憑性ゼロです。
親が日常生活の中で本を楽しんでいる姿をしっかり見せることが、子どもも「そんなに面白いなら、自分も本を読んでみよう」に繋がるのではないかと思っています。
先ほど、食堂に書棚をつくったと書きましたが、ちょっとしたスキマ時間に本を読んでいて「さ、晩ごはんでもつくるか」となった時に一時的に本を置いておく場所が食堂にない状態を解消したいというのが、書棚を作ったもう一つの理由でした。
ふだんよく過ごす食堂に書棚をつくることで自分が本を読みやすい環境をつくり、それによって読書量が増え、親が読書する姿を娘が日常的に目にする。この状態をつくるために、食堂に書棚をつくったわけです。
実際、最近になって娘が「お父さん、いっつも本を読んどるでな」(鳥取弁)と言ってきました。
まだ本人がすすんで本を読む姿を見るのは多くはないですが、日々少しずつ、彼女の生活の中に本という存在がしっかり根付いていっているように思います。
のんびりと、一緒に本を楽しみつつ、見守っていこうと思います。