ロングトレイルに(少しだけ)憧れて

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今から10年以上前、まだ東京で暮らしていた頃、毎年2〜3週間の休暇をとって、単車でツーリングや、移動しながら野宿するキャンプ旅などに出かけていました。

ある年のツーリングは、有明港から北九州港までフェリーで移動し、福岡県から佐賀県を経由して長崎県まで西進、その後は高速道路を一切使わず、一般道をひたすら東京を目指して走りました。

大雨に降られて滝のようになった長崎県の峠道(道程中、終着点である東京から最も遠い地点)で転倒した時の絶望感、山口県湯田温泉で数日ぶりに入った風呂の気持ち良さ、琵琶湖のほとりに張ったテントの中で迎えた美しい朝、岐阜から長野へ抜ける山深い道の神秘的な空気感……。

1日いちにち、行程のすべてに、ものすごく濃密な思い出があります。

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僕は、点と点を繋ぐ線、つまり目的地への移動そのものを楽しむ旅が好きです。

僕がツーリングの計画を立て、それを登山や沢登りなどを一緒に楽しんでいた友人に居酒屋で披露すると、彼らは「帰ってきたら、次は、全行程を歩いて移動する旅を計画しよう」と言いました。飛行機よりも車、車よりも自転車、自転車よりも足で歩く。そんな旅に出ようよ、と。

石川直樹くんが参加した、北極点から南極点まで、徒歩や自転車、カヌーなどを使った人力走破プロジェクト(P2P)の本を読んでいたこともあり、友人たちが披露したそのコンセプトの旅の企画にとても興奮した記憶があります。

結局そのコンセプトの旅は実現しませんでしたが、今も僕の中には、「歩いて旅がしたい」という思いがあります。

日本でのロングトレイル

この「歩く旅」を自然の中で実践するために整備された道を、ロングトレイルと呼びます。

英語なだけにイギリスやアメリカなどが発祥、親しまれているアクティビティですが、日本にも、1970年頃に環境省が計画した長距離自然歩道という、総距離27,000kmにも及ぶ、まさにロング(な)トレイルが存在します。

ところが管理・運営は各都道府県に一任されているため管理実態は様々で、荒れ放題になっていたり、中には一般道などで寸断されていたりするようです。そんな状況ですから、地元住民の認知度も低く、利用者が道を尋ねても「なにそれ?」といった対応になってしまうこともあるようで。

その長距離自然歩道の「中国自然歩道」には鳥取県も含まれていて、県西部の境港市から東部の鳥取砂丘まで東進し、智頭町まで南下して岡山県に抜ける、総距離約324kmのコースがあるようですが、そのトレイルの存在は僕も知りませんでしたし、歩いている/歩いたという人を見たこともありません。

本来、地元の自然や文化を誇りとして、それを歩きながらまず自分たちが楽しむ、そしてヨソの人にも楽しんでもらいたいという地元の思いから、トレイルがつくられていくのが自然な流れのように思うので、長距離自然歩道のように行政が主体的にやっても、なかなか難しい気がします。

そういう意味では、鳥取に新しくできたトレイルである「山陰海岸ジオパークトレイル」も、今後どうなるかは分かりませんが、40km程度のちょうどよい距離なので、個人的には1泊2日くらいの日程で、来年の春くらいに歩いてみたいなと思っています(子どもを背負っての行程となるので、あまり重くならないうちに…笑)。

ロングトレイルでまちおこし

移動手段が歩きから、自動車、新幹線や飛行機に変わった現代では、点と点の間は通り過ぎるだけで、存在しないに等しくなりつつあります。

このため起きている地域経済の減退や過疎化を食い止める一つの手法として、移動手段を逆転させたアイディア、つまりフットパス(ロングトレイルのイギリスの呼称)によるまちづくりが、日本各地で提唱されはじめているようです。

以前、鳥取の食品をネット販売する仕事をしていたのですが、定期的に大量のせんべいを購入くださる四国在住の方がいらっしゃいました。ある時、その方と電話で話す機会があったので聞いたところ、お遍路さんにお出しするために買っているんだと話されていました。いろいろ食べてもらったけれど、これが一番評判がいいんだと。

正直、驚きました。たしか、2〜3か月おきの購入でしたが、一度の注文で2万円前後はご注文くださっていたと思います。それを、見ず知らずの人たちに配るわけですから。

ロングトレイルをハイキングする文化が根付いているアメリカでは、トレイルマジックなる、同じような文化があります。トレイルエンジェルと呼ばれる、トレイルの周辺に暮らす住民が、そこを歩く人たちのために食料品や飲料水を無償で提供するのです。必要な場合は車での送迎や、なんと寝床の提供や洗濯までしてくれるエンジェルもいるとか。

トレイルの魅力もさることながら、そこに暮らす人たちとの触れ合いも、非常に大きな魅了になっているのは間違いなさそうです。

まちおこしという途方もなく大きな目標を達成するには、熊野古道や四国八十八箇所巡り、またアメリカのように、本当の意味で地元に根付いたトレイルでなければいけない、という気がしますね。

家族でロングトレイルを歩きたい

さて、今回も意図せず長文になってしまいましたが、何が書きたかったかと言えば、いつか家族でロングトレイル、それも1週間とか2週間かけて踏破するようなトレイルを歩いてみたいな、ということです。

定期的に図書館から借りている「LONG TRAIL HIKING」という本があります。

写真が主となったビジュアルブックのような仕上がりですが、この本にあるような青く抜けた空と、木と草と石、川や雪だけの、人工物のない景色の中を、みんなであーだこーだ言いながら、てくてくと歩いてみたいのです。

CAMP HOUSE/LONG TRAIL HIKING BOOK

CAMP HOUSE/LONG TRAIL HIKING BOOK

きっと、10年前に一人で行ったツーリングの時のように、絶望感に襲われたり、美しい光景に言葉を失ったり、そして今度の旅は一人ではないので、お互いに腹を立てたり、励ましあったり、笑ったり、泣いたりする日々になるのかなと。

最初は苦しさが勝る旅の思い出が、徐々に良い思い出に変わっていき(思い出って、そういうもんですよね)、そして家族の繋がりを太く強くしてくれるのではないかと思うのです。

ちなみに、実際にロングトレイルを歩きに出かける! という場合は、こちらの本が詳しくて良さそうでした。

aw

Live in Tottori-Pref, JPN. Love Camp, Sandwich, Coffee, Beer and Scotch on the rock. Pursuing Self-Sufficiency Life.

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