寝室と本

子どもを寝かしつける時に本を読む、というのは多くの家庭がやっていることだと思います。うちもご多分に漏れず。

子どもの年齢が上がり、本の種類が絵主体のもの、いわゆる絵本と呼ばれるものから徐々に文字主体のものになっていくに連れて、親の動機も、子どもを眠りへと誘うことから読書という知的体験そのものや知識、知恵に触れさせてやりたい、といったものに軸が移ってくると思います。

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僕と娘が寝ている寝室

娘には、彼女がまだひらがなもきちんと読めない頃から100ページ超えの本を読みかせてたりしていましたが、正直、ストーリーや登場人物の心情をきちんと理解できていたかについては大いに疑問がありました(ただし、文章をほぼ丸暗記したりして別の意味で親を驚かせたりしていましたが)。

ところが最近になって、物語の展開や状況に正しく(という表現が適切か分かりませんが)反応するようなってきました。

先日も「エルマーのぼうけん」という本を読んでいたのですが、主人公のエルマーが緊迫した状況を迎えると緊張し、ピンチを乗り越えるとホッとして弛緩した表情を見せたり、緊張感からの解放か声を出して笑ったり、そしてまた危機が迫ると僕の腕をぐっと掴み、「エルマー逃げて〜」と声をかけたり……

大人の僕にとってはサラッと読み流せるようなかわいらしいストーリーなんですが、娘にとってはハラハラドキドキの連続だったらしく、隣にいる彼女の感情が僕にも強く伝わってきたんです。

それで、読み聞かせている僕も彼女に同調したのかワクワクドキドキしてしまって、とても楽しい読書になったんですよね。楽しいというか、僕が知っているものとは全く異なる、不思議な読書体験でした。

夜眠る前の30分ほど。ベッドにごろんと寝転がって娘と一緒に本を読むこの時間は僕にとってとても楽しく、貴重で、大切な時間。

日々、娘の成長を感じると同時に、彼女との時間は有限であり、いつか全てが終わる時がくることを僕は常に意識しています。

だから、冒頭に書いたような動機はちょっと横に置いといて、娘と本を読む時間をただただ楽しみたいと思ってしまうのですが、最近それが特に強くなってきているような気がします。

さて、娘が寝入ったあとは、小さな電球に明かりを灯して、今度は僕だけの読書の時間がはじまります。

先ほどまでの感傷的な気分からスパッと切り替わり、その時間に僕の関心が向くのは娘の教育についてです。

およそ1年後と迫った進学に向けて、いろいろと考えることが多いのですが、そんな中で手に取ったこの本、「教育格差」。

教育関係者に向けて書かれたものだと思いますが、ひとりの親である僕にとっても非常に衝撃的な内容でした。

この本の冒頭に掲載された7の質問に、僕はほとんど正しく答えることができませんでした。

  1. 親の学歴により、習い事や教育サービスなどの利用格差が顕著になるのは……小学校就学前/小学校低学年/小学校中学年
  2. 公立の小学校同士の間で学力格差が確認できるのは……1年生から/4年生から/6年生から
  3. 家庭の文化資源(蔵書数)による学力格差は、小学6年から中学3年までのあいだ学年があがるにつれ……拡大する/変わらない/縮小する
  4. 戦後、教育格差(親の学歴と子の学歴の関連強弱)は2000年頃から大きく……拡大した/変わっていない/縮小した
  5. 相対的貧困にある子供の数は1980年代と比べると2010年代に大きく……増えた/変わっていない/減った
  6. 授業以外でまったく学習をしない15歳(日本の高校1年生相当)の割合が最も高い国は……アメリカ合衆国/フィンランド/日本
  7. 日本の教育格差は国際(OECD)平均と比べて……大きい/変わらない/小さい

みなさんはいかがでしょうか。

この本に書かれていることを簡単にまとめると、以下のようなものです。

日本は凡庸な格差社会・身分制度であり、本人には選択できない「生まれ(出身家庭—親の学歴・社会経済的背景(SES)—や、生まれた地域)」という初期条件によって、職業、収入、健康など、その後の人生の選択肢や可能性が制限される社会。このことに本人や親はもちろん、多くの日本人は気づいておらず、そしてこの格差は、「公平性」の名の下に構築された現在の教育制度によってより強化、拡大される仕組みとなっている。

格差社会、身分制度と穏やかではない言葉が連なりますが、かなりのページ数を割いて紹介されている国内外のデータや論文によって、これが事実であることが示されています。

我が家のSESや地域は、この本に提示されている例において、最も低いカテゴリに属します。

つまり僕の娘は、生まれながらに不利な状況にいて、選択肢や可能性が制限されるというわけです。そして何より恐ろしいのは、意識的にせよ無意識的にせよ、娘にとって大きな影響を与える立場の親である僕たちが、そう導いてしまうであろう可能性が高いということです。

「それが分かったのだから、自分たちの考えをあらためて事前に手を打てるはず」なのですが、この本を読む限りでは、それもなかなかに難しそうです。もちろんそれが困難でも、そうなることを良しとは思えない自分がいるわけですから、打破できるように進んでいくしかないわけですが。

僕自身、勉強や学歴が全てではないとは思っていますが(これが低SESの特徴でもあるわけですが…)、以前このブログでも紹介した本にもあるように、単なる試験の点数だけの勉強ではない、幅も深みもある学びの方法が研究・実践されはじめていて、学ぶという体験そのものが変容してきています。つまり、自分が体験してきたものとは違う学びがはじまってきているわけです。

それに、僕を含めて多くの人が大人になってから気づくように、勉強は一生続くもの、続けていくべきものなんですよね。

僕の中に存在する「勉強」に対する固定的な見方、観念をまずは変えることに取り組んで、娘と一緒に学んで行けたらいいなあと考えているところです。

aw

Live in Tottori-Pref, JPN. Love Camp, Sandwich, Coffee, Beer and Scotch on the rock. Pursuing Self-Sufficiency Life.

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2件のフィードバック

  1. たかまる より:

    こんにちは。いつもブログの更新を楽しく拝見をさせて頂いております。
    私は4年ほど前に東京から妻の実家である佐賀県へと移住をいたしました。東京のギスギスした社会で子育てをするより、地方の自然が豊な環境で伸び伸びと育ってほしいと思ったからです。現在、子供は3人に増え、地方ののんびりとした環境で子育てが出来ておりますが、子育てやその後の教育の質という点では東京での子育てや教育の機会の損失を感じてしまいモヤモヤとする部分を感じてしまう瞬間もあります。とはいえ、東京で子育てをしている友人を見ると、とりわけコロナ禍において特段の不安やストレスを感じる事なく子育てが出来ており移住をして正解だったと思う事もしばしばです。
    私は築30年の中古物件を簡単なDIYで工夫をしながら生活し、機会があれば近場のキャンプ場でキャンプをしたり登山をしたりとawさんに近い価値観で生活をしています。
    今回の記事は私が常にモヤモヤとしていた悩みを同じくawさんも抱えてらっしゃったというのを知り、思わずコメントをさせて頂きました。
    これからも記事の更新を楽しみにしております。冬キャンプの本格的シーズンが始まりますので、お身体にお気をつけてアウトドアライフを楽しんでください!

    • aw より:

      たかまるさん、はじめまして☺️
      コメントありがとうございます! そしていつもお読みくださっているとのこと、ありがとうございます。

      東京から佐賀県に移住されたのですね。奥様のご実家があるということで縁のない土地というわけではないにしろ、短期滞在するのとそこに暮らすのとでは大きな差がありますよね。実家があり、生まれてから20年間暮らしていた鳥取に17年ぶりに帰郷して暮らし始めた時でさえ色々と考えましたので、たかまるさんの感じられていること、想像ではありますが分かる気がします。

      マイナスな点ばかりが気になることもあれば、プラスに思えることもあったりして、どうしても揺らぎますよね。特にお子さまがいらっしゃるということになれば、考えること感じること、本当に様々だと思います。特に教育に関してはどうしても考えてしまいますよね。

      本当に何が正解なのかは分かりませんが、子どもと一緒にえながら悩みながら、同じ時間を過ごしつつ成長していけたらいいなと思っていますが、実際に学校に上がったらどんな親になるのだろう?笑 少しの期待と大きな不安を持ってその時を待ちたいと思います。

      たかまるさんも、ご自宅をDIYで修繕されてるんですね。そしてキャンプや登山、いいですね! 僕は佐賀県は若い頃に単写でひとりでツーリングしている時に通過したことしかないのですが、ジャック・マイヨールが愛した海もありますし、きっと自然豊かな場所なんでしょうね。いつか行ってみたいです。

      今日、鳥取は雪が降っています。10センチほど積もっています。かなり寒くなりました。たかまるさんも、ご家族のみなさんも、どうぞご自愛ください!

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