柳茶屋キャンプ場グランピング化計画を調べてみた(前編)

少し前の4月9日、地元紙にこんな記事が掲載されていました。

日本海新聞2020年4月9日

「(鳥取砂丘)柳茶屋キャンプ場をグランピングやオートキャンプ場に整備し直し、有料化することを提案」とあります。

鳥取県東部に暮らすキャンパーは、みな驚いたのではないでしょうか。

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鳥取砂丘柳茶屋キャンプ場(以下、柳茶屋キャンプ場)は、僕とトム(妻)の結婚パーティを開催した思い出のキャンプ場。

ある理由で、最近は利用する回数が激減していますが、時々デイキャンプに使っていますし、結婚前は週に一度はソロキャンプをしていたりと、かなり利用していました。

その柳茶屋キャンプ場が「グランピング場に再整備」(以下、グランピング場計画)というニュースは、僕の中になにか小さなモヤモヤを残していたんです。

その正体は、次のような疑問でした。

グランピングには向かないのでは

柳茶屋キャンプ場は、ぐるっと一周歩くのに5分もかからないほど狭く、また防砂林に囲まれているため、名前に含まれる鳥取砂丘がテント場から眺められるわけでもなく、星空も松の枝の間から垣間見る程度で、景観が良いとは言えません。

完全なる私見ですが、グラピングに適した土地とは、開放的な広い土地で、日中は景色、夜間は星空と眺望が楽しめる、そんな場所。グランピングのブッキングサイト「GLAMPICKS」などを見ても、そうした場所がグランピング場として選ばれている印象です。

加えて、柳茶屋キャンプ場は、地元民はもちろん、バイクや自転車でツーリングしている旅行者たちに気軽に利用できるキャンプ場として愛されています。

現在のユーザーを完全に切り捨ててしまうような計画はいかがなものか、と思ったわけですね。

がしかし、誰が、どんなプラン・提言を鳥取市に提出したのか、詳細を知らずして何も語れるわけがありません。

というわけで調べてみました。

鳥取砂丘未来会議の提言、その内容とは

鳥取市に「鳥取砂丘の滞在環境等の上質化に関する提言」を提出したのは、鳥取砂丘未来会議という組織です。

鳥取砂丘未来会議は、「鳥取砂丘の保全と利活用について考え」、「環境省や県、鳥取市、地元団体や大学などで構成し官民で鳥取砂丘の将来像を描いていく」組織(*1)とのこと。

なにやらお堅いイメージで、角の落ちた丸い案が出てきそうな雰囲気がしますが、国立公園である鳥取砂丘やそこに位置する県や市の管理施設(柳茶屋キャンプ場は鳥取市管理)に手を加えるわけですから、国や県などが参加するチームじゃないと、計画も絵に描いた餅になるわけで、まあ仕方ないですよねぇ。

はてさて、どんな計画なのか。鳥取砂丘未来会議がホームページで公開している、鳥取市に提出した提案書や関連する資料を読んでみました。

  1. 鳥取砂丘の滞在環境等の上質化に関する提言」 2020年4月
  2. 鳥取砂丘エリア 国立公園利用拠点計画」 2020年3月25日
  3. 報告書 鳥取砂丘西側ワーキンググループ」 2019年8月
    *全てPDFファイル(動作、やや重いです)

冒頭の新聞記事になっていた、鳥取市に提出された提言書は、1の「鳥取砂丘の滞在環境等の上質化に関する提言」です。

柳茶屋キャンプ場のグランピング場計画については、この中の「提言3」に記載がありました。

提言3:サイクリングターミナルと柳茶屋キャンプ場の整備(鳥取市)
サイクリングターミナル砂丘の家には砂丘西側の総合案内的機能を、柳茶屋キャンプ場にはグランピングやオートキャンプといった新たな機能を整備し、砂丘西側の拠点施設として民間活力の導入を前提に、一体的に運営されるよう提言します。

そもそも、このグランピング場計画は、鳥取県東部ほぼ唯一の観光資源である鳥取砂丘を、保全しつつも経済的に最大限活用するための大きな計画の一部。

計画全体の概要は、2の「鳥取砂丘エリア 国立公園利用拠点計画」にまとめられていますが、ざっくり言うと、鳥取砂丘周辺を東側と西側の2エリアに分け、相互に連携させつつも、それぞれの特徴を活かした整備・開発をしていこうというもの。

鳥取砂丘未来会議の資料
出典:鳥取砂丘未来会議「鳥取砂丘エリア 国立公園利用拠点計画

鳥取砂丘といえば、観光客はもちろん僕たち地元民にとっても、東側エリアを指します。

この東側エリアの観光客数は年間250万人以上で(*2)、鳥取県内のその他の観光地を大きく引き離して堂々第1位。最近では訪日観光客が最も注目している観光地として紹介されたりもしています(*3)。

一方、西側エリアは、廃墟と化したホテルや閉店した店、存在感のない市営の施設が点在し、隅っこに柳茶屋キャンプ場、といった感じ。東と西でかなりのギャップがあります。

つまり、観光地としての鳥取砂丘は、鳥取砂丘そのものの魅力だけで成立している状態。周辺コンテンツがないため、観光客がアクティビティを楽しんだり宿泊するなどして長時間滞在することができず、鳥取砂丘を見て歩いておしまい、食事や宿泊はヨソへ、というのが実情なのです。

でも、逆に言えば、観光地として手を加える余地がたくさんあるってことなんですよね。

衛星写真を見ても分かるとおり、鳥取砂丘は観光客が歩く東側よりも、むしろ西側の方が広大。砂丘特有の生物や植物も生息しています(僕は一度だけここを歩いたことがありますが、こちらの方が鳥取砂丘の広大さを体感できる気がします)。

観光地としての鳥取砂丘
出典:Googleマップ

鳥取砂丘の西側にアクセスしやすい(しかし現状荒れ果ててしまっている)西側エリアに、リゾートホテルを誘致し(*4)、砂丘西側を活用したアウトドアアクティビティの拠点施設を設けるなどして整備、東側エリアとシームレスで一体的な観光地として再開発しようというわけです。


現在のサイクリングターミナルを西側エリアの総合窓口に転換(出典:鳥取砂丘未来会議「鳥取砂丘エリア 国立公園利用拠点計画」)

ふむふむ、なるほど。

西側エリアの計画の詳細

では、全体の計画のうち、柳茶屋キャンプ場が位置する西側エリアの計画をもう少し見てみたいと思います。

西側エリアにおける主要コンテンツは以下の4つです。

  1. リゾートホテル(新設)
  2. ビジターセンター(新設)
  3. ガイド窓口・カフェ・ショップ・E-Bikeレンタル(既存施設を転換)
  4. グランピング・オートキャンプ場(柳茶屋キャンプ場を転換)

このうち、1については「リゾートホテルを誘致する」ことしか書かれていないので、基本的には2〜4に関する計画になります。

この3要素に対して設定されている「ターゲット」と「整備コンセプト」が、前出の「鳥取砂丘エリア 国立公園利用拠点計画」に書かれています。

(ターゲット)
(1) 団体観光客ではなく主に国内およびインバウンドの個人客・ファミリー客・グループ客を来訪ターゲットに設定し、砂丘本来の自然・風景・歴史文化の魅力が体感できる滞在を志向する人々
(2) 地元鳥取市やその周辺の、年少児童・幼児を連れたファミリー層などの、素朴で安全・低コストの、充実し落ち着いた滞在およびリピート来訪を志向する人々
— 「西側エリアのターゲット像」(15ページ)

整備コンセプト
(1) 学びと遊びの場を両立させた、子どもたちにとっても安全で機能的な環境を整備する
(2) 砂丘地や自転車レーンを利用できるレクリエーションやガイドツアーの拠点を整備する
(3) 自然だけでなく歴史文化も楽しめる場づくりを行う
— 「<浜坂側利用拠点ゾーン>の整備コンセプト」(16ページ)

グランピング場計画の目線で読んでいたこともありますが、正直、「?」となりました。

これらは、主要コンテンツのうち、2のビジターセンターが自然文化解説や環境教育支援、野外活動支援といった機能を有する施設として新規建設が予定されており、また3の施設も似た方向性の施設・サービスであるため、このような内容になっていると思われます。

となると、グランピング場計画はどこから出てきたのでしょう。

「地元鳥取市やその周辺の、年少児童・幼児を連れたファミリー層などの、素朴で安全・低コストの、充実し落ち着いた滞在およびリピート来訪を志向する人々」が利用できる、「学びと遊びの場を両立させた、安全で機能的な環境」がグランピング施設、ということなのでしょうか。

経緯が分からないので何とも言えませんが、鳥取砂丘未来会議が公開している資料を見る限りでは、グラピング場計画はターゲットや整備コンセプトに沿って生まれたアイディアではないように思えます。

う〜む……。

– – –

長くなってしまったので、前編はここまで。

後編では、僕が考える柳茶屋キャンプ場の変更案を共有したいと思います。

*1「」内出典:毎日新聞
*2 鳥取県統計課 「鳥取県内の地域別観光客入込客数は何人ですか
*3 週刊文春 「「日本人だけが知らない」鳥取県が外国人観光客をうなぎのぼりに集める3つの理由」 Gaijinpot: Top 10 Japan Travel Destinations For 2019 / 7 Experiences You Can Only Get in Tottori, Japan / 5 Reasons To Visit Tottori
*4 とっとりのーと 「鳥取砂丘にリゾートホテル建設へ!鳥取を代表する観光地に2022年11月オープン予定

aw

Live in Tottori-Pref, JPN. Love Camp, Sandwich, Coffee, Beer and Scotch on the rock. Pursuing Self-Sufficiency Life.

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