小さな村をつくって暮らす 2026
ちょうど8年前、2018年6月にこんな記事を書きました。
歳食ってジジババになったら、仲良しの友だちと集まって小さな村のように暮らすのがいいよね、という妄想を書いた記事です。
これを書いた当時は40代前半だった僕も齢50を過ぎましたし、後期高齢者となった両親を見ていると、自分の老後について否応なしに考えさせられます。
今住んでいるT町の家で暮らし続けるのか、このブログを書くキッカケとなったキャンプハウスをR町の土地で実現しそこで暮らすのか、はたまた全然違う別の選択肢があるのか……まだ具体的に考えられていませんが、今回は、8年前にこの記事で考えた「R町の土地に村をつくって住むという妄想」を、別の視点で見てみたいと思います。
高齢者が住む土地としてのR町
今回は、R町の土地にこんな家を建てて、小さな畑を作ってといった自分がどうこうする話でなく、外部環境を中心に考えてみます。
トム(妻)の祖父が所有するR町の土地は、鳥取の市街地から車で20分強の場所にあります。住所が示す集落からは外れたエリアに位置し、ご近所さんと言えるのは一軒だけと、やや辺鄙な場所ではあるものの、高齢者が暮らすにあたって大切な施設、病院や消防署は車で5分ほど、スーパーやドラッグストア、コンビニなども同じ圏内にあり、比較的住みやすそうな印象です。
そう、今のところは。
では、未来のR町での暮らしはどうなっているのか。この記事では未来を今から14年後の2040年から、さらに10年後の2050年頃と定めて話を進めていきます。ちなみにその未来が到来した時、生きていれば僕は2040年に66歳、2050年には後期高齢者である76歳になっています。
R町の土地が高齢者でも暮らしやすそうと考えた根拠に挙げた病院や消防署、スーパーやドラッグストアは、今と同じように、未来にもそこにあるでしょうか。
町が縮む
いま日本は、死者数の増加と出生数の低下によって、1年間に100万人規模で減少しはじめています(2025年は92万人の減少)。100万人というと鳥取県と島根県の人口を合わせた数※1とほとんど同じです。
それだけの規模で人がいなくなっているのに今ひとつ実感が湧かないのは、当たり前ですが県単位で消滅しているわけではなく全国に分散しているため、また、率にすると数パーセントに過ぎないためですが、10年単位での変化になるとどうでしょうか。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が公表したデータによると、2040年の日本の人口は、現在よりも1230万人少ない1億1073万人に、2050年は1億125万人になると推計※2されています。
その社人研が公表している地域別将来推計人口で、R町が属す鳥取県岩美郡岩美町の人口を見てみます。( )内の数字は、2020年を100として指数化したものと、減少率です。
| 2020年 | 2030年 | 2040年 | 2050年 | |
|---|---|---|---|---|
| 鳥取市 | 188,465 (100) |
173,354 (92.0 / 8.02%) |
158,567 (84.1 / 8.53%) |
142,787 (75.8 / 9.95%) |
| 岩美町 | 10,799 (100) |
9,224 (85.4 / 14.58%) |
7,672 (71.0 / 16.83%) |
6,168 (57.1 / 19.60%) |
| 新温泉町 兵庫県 |
13,318 (100) |
10,646 (79.9 / 20.06%) |
8,319 (62.5 / 21.86%) |
6,202 (46.6 / 25.45%) |
この推計では、2040年に岩美町の人口は現在から2割減の7000人台へと減少しています。この数字が将来現実となる可能性が高いという前提で、R町の土地の未来を考えてみたいと思います(鳥取市、新温泉町の数字が併載されている理由は後ほど)。それにしても、どの市町も減少率が加速しているのが恐ろしいですね。
縮小した町に病院は残れるか
京都大学の教授で、独立行政法人経済産業研究所のファカルティフェローである森知也氏は、高度な数理モデルと統計データを元にした「100年後の日本の人口は3000万人規模になる」という推計から、日本の地方が総花的に地域を維持することは困難であり、むしろ多くがゴーストタウン化すると主張されています(森氏の主張に関連する資料を文末に掲載していますので、興味がある方はぜひご覧ください)。現在の人口維持を目標に掲げる国や地方自治体のスタンス、打ち出す施策に常々疑問を感じていた僕にとって興味深い資料でした。
森氏の主張をごく簡単に説明すると、人口規模(しきい値)に応じて、都市機能は段階的に積み重なっていく(ネスト化する)というもの。要するに、人がたくさんいる場所にはたくさんの機能=行政、企業や金融、商業施設が集積し、人口の少ない場所はこれら機能も少なくなっていくよ、という理屈としても実感としても理解しやすい主張です。
彼の主張を理解しやすいように、森氏の理論を土台として国が都市計画などで用いる人口区分なども活用しつつ僕がAIで作成した表が以下です。
| 階層 (ネスト) |
人口 (しきい値) |
主な都市機能(商業・サービス等) |
|---|---|---|
| 最高階層 (大都市圏) |
100万人以上〜 | 超大型商業施設、ハイエンドなエンターテインメント、あらゆるニッチな専門店、国際金融・中枢管理機能 加えて(A)+(B)+(C)+(D) |
| 第4階層 (地方中枢都市) |
30万人 〜50万人規模 |
デパート(百貨店)、高級ブランド店、大学医学部附属病院・高度先進医療機関、劇団・コンサートホール、専門的なビジネスサービス(外資系企業支店など)=(A) 加えて(B)+(C)+(D) |
| 第3階層 (広域中心都市) |
10万人 〜15万人規模 |
ユニクロなどの専門衣服店、くら寿司などの回転寿司チェーン、家電量販店、複合ショッピングモール、シネコン(映画館)、救命救急センターを持つ総合病院 =(B) 加えて(C)+(D) |
| 第2階層 (自立的生活圏) |
3万人 〜5万人規模 |
一般的な食品スーパー(複数)、ドラッグストア(中〜大型)、100円ショップ、ファミリーレストラン、ケアミックス型病院(軽度な入院・リハビリ対応)=(C) 加えて(D) |
| 第1階層 (基礎的生活圏) |
数千人 〜1万人未満 |
コンビニ、ミニスーパー、ガソリンスタンド、郵便局、役場(支所)、公立診療所(内科・町医者)、初期救急・消防駐在所 =(D) |
(繰り返しますが、awが作成した表なので、森氏の主張を正確に反映していない、食い違っている可能性があります)
この表の最高階層には、この表の「主な都市機能」に記されているもの全て、第1階層から第4階層のもの(A〜D)を含めて全て包含します。階層が下になるにつれて保有する機能が減っていき、第1階層には第1階層に記された都市機能しかありません。
2040年の岩美町はこの表では第1階層に当たりますが、第2階層の「ケアミックス型病院」である岩美病院が、2040年以降も存続しているかどうかがポイントです。
岩美病院が2023年に公開した資料「経営改革プラン」を見ると、この病院の利用者の2割近くが東に隣接する新温泉町(兵庫県)の住人です。2020年時点の岩美町と新温泉町の人口合計は2万4000人強。第2階層の3〜5万人には及ばないものの、近い数字です。つまり岩美病院が対象としている圏域は、岩美町だけではなく新温泉町も含まれる、というわけです※3。
ただ、上に掲載した人口推計の表の新温泉町を見ると、2050年には現在の半分以下という、岩美町を上回る早さで人口減少が進むことが分かります。2つの町を足しても人口は1万2000人ほどです。
岩美病院の経営改革プランに2050年は含まれていませんが、当然彼らもこの推計は知っているはずです。現在、病機能の一部を西に隣接する鳥取市(第3階層)の総合病院へと移し、床を減らしつつ、退院後のリハビリや訪問介護など地域医療支援に軸足を移すかたちで生き残りを図っているようです。
2050年、後期高齢者となった僕にとって医療施設は今よりもはるかに重要なものになっているでしょうから、地域の中核病院の不確かさが、移住に対しての大きな懸念材料であることは間違いありません。
他の商業施設は
森氏の理論によれば、コンビニやスーパーマーケット、ガソリンスタンドは残る可能性が高そうです(ドラッグストアは微妙)。もちろん鳥取県東南に位置する山間部の町からスーパーが撤退し、一時的とはいえ食料品を買う店がなくなった事例もあり、岩美町においても予断を許しませんが。
公的サービスである消防はカタそうです。数年前に建て替えもしているので、24年後とはいえ移転という可能性も低いのではないかと。
あと一つ、考えたいこと
もう一つ、人口規模だけでなく、その人口を構成するのが何歳の人たちなのか、という点も考えなければいけません。
社人研の推計によれば、65歳以上の構成比が2050年には40%近くに達する※4とのこと。しかしこれは中位推計であることと、日本全体に対する数字であることを考えれば、岩美町がより高い数値になるであろうことは容易に想像できます。
人口の規模、年齢別の構成比などを絡めた分析(されたものを読む)はまたの機会にしたいと思いますが、あまり明るい話になりそうにないのが残念です。
ですが、明るい話もあります。
これも森氏が述べているものですが、技術の進展、すなわち自動運転車の普及や公共バスの自動運転化、eVTOL(電動垂直離着陸機=空飛ぶクルマ)の実用化、ドローンによる小型運搬の効率・高速化、オンライン診療の拡大、外科手術の遠隔化などは、地方での暮らしに希望をもたらす可能性があります。
人口統計・推計に基づいたほぼ確実に起こるであろう未来予測と、まだ実現していない技術に基づく未来の話を同列に語ることはできないかも知れませんが、地方の暮らしを支えるであろう技術の発展には期待したいですね。
移住して開村すべきか
という問いに対しては、残念ながら現時点では「NO」という答えになりそうです。
手入れして、週末に過ごすプチ別荘的な場所に仕上げて活用しつつ、時流を見て判断したいと思いますが、統計データというのは非常にカタいものなので、とてつもない何か—南海トラフ巨大地震や富士山の噴火、首都直下地震などが立て続けに起きて、太平洋側の都市が大きな被害を受けたり、首都機能が失われて関東圏で暮らすのが困難になるなど、考えたくはないがいつか確実に起きるとされている—が起きて日本国内の人口分布に大規模な変化が生じるとか、そんなとてつもない変化が起きない限りは、R町の村計画は、僕の脳内で眠ったままになることでしょう。いやむしろ、そんなことが起きたら村計画は遠のきますね。
村計画は、歳食った自分とトム(妻)や周囲の人たちがいかに幸せに暮らすかという問いから求めた一つの解(妄想)なので、別の手段を考えていくしかないのかも知れません。
- 鳥取県の人口 51万9000人(2026年4月時点・出典:鳥取県「鳥取県の人口」)と島根県の人口 63万2000人(2025年12月時点・出典:島根県「島根県の推計人口」)を合計すると、約115万1000人となります。
- 下位推計です。上位推計は1億1496万人(-7.04%、809万人減)、中位推計は1億1284万人(-9.05%、1021万人減)となっていますが、現在はより急速に人口減少が進んでおり、下位推計でも楽観的だと言われはじめています。比較は2025年の国勢調査速報値1億2305万人に対するもの。推計値の出典は国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口 令和5(2023)年推計」
- 新温泉町には公立浜坂病院、浜坂七釜温泉病院といった中規模の医療施設があります。
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」
森知也氏の主張に関する参考記事
- 独立行政法人経済産業研究所
- 金融庁「人口減少下での日本の地域の将来のすがた」
- 日本交通政策研究会「人口減少と距離摩擦の減少下における日本の都市の持続可能性」


